W杯全試合で守備の要を務めてきた、センターバックのヨコハマ・ブランド。


井原正巳

 

F・マリノスは伝統的に高い守備力を誇るチームである。

J開幕以来、J2に降格することなくトップリーグの位置を維持しており、通算失点数は鹿島アントラーズの866失点に次ぐ、870失点という少なさ。アントラーズの方が多いタイトルを獲得していることを考えると、マリノスはタイトルが取れない年も、継続的に安定的に守備の堅さを見せてきたことがわかる。

降格争いをした年も、得点が取れないことが問題であり守備は大きく崩れることはなかった。

松田直樹

 

 

これは日本代表でも同じことであり、代表のディフェンスラインは常にマリノスの選手が努めてきた。98年フランスワールドカップの井原正巳、小村徳男。2002年ワールドカップでの松田直樹。2006年ドイツと2010年南アフリカでの中澤佑二。実に全てのワールドカップのゲームで、最終ラインはマリノス勢が締めてきた。

小村以外は全てフル出場であり、井原と中澤は本大会でキャプテンも務めた。松田も代表でのキャプテン経験がある選手である。

中澤佑二2

 

 

マリノスというチームの守備の堅さは、アントラーズが一貫して4−4−2を敷くように、エスパルスのサポーターがサンバのリズムで応援するように、ヴェルディの若手はやんちゃな選手が出てくるように・・・。Jリーグが持つひとつのカラーとなっている。

 

井原正巳を松田が追い出し、小村徳男がマリノスを去ると同時に中澤がマリノスで中心なっていくなど、世代交替も実力通りに行われ、常に屈強で力強い選手達がゴールを守っていく。日本代表の歩みはマリノスのディフェンスと共にあった。

 

 

栗原か、中澤か、それとも途絶えるのか

 

しかし、日本のワールドカップでは全ての時間ゴールを守ってきた「マリノスブランドのセンターバック」は、ブラジルでは見ることが出来ないかもしれない。

センターバック、ヨコハマ・ブランドの代表格・中澤佑二は常に代表復帰が期待される選手である。従来の高さ・強さに加え、近年はベテランらしいいぶし銀のプレーも見せており、Jリーグで優勝争いを続ける好調F・マリノスを支え続けている。

しかしザッケローニ体制では一度も招集されず、闘莉王と共に「ザックにフィットしない」選手として名前が挙がり続ける選手になってしまった。

確かにラインを高い位置で保ち、コンパクトにボールを奪うザックの守備戦術では、裏へのスピードに難のある中澤を起用するというのは難しく、中澤自体も衰えが見えるだけに招集しづらい選手なのは間違いない。

とはいえ守備崩壊中の日本代表において、国際経験豊富なセンターバックがいないという自体はある意味スクランブル。2002年W杯で、ワンポイントのパワープレー対策とチームの結束のために秋田豊が招集されたように、中澤が代表に入るのは決してマイナスではないのではと感じる。

 

 

もうひとりのヨコハマ・ブランド、横浜に生まれ横浜で育った栗原勇蔵は、ザックジャパン結成当初は指揮官の信頼をガッチリと得ていた。強豪アルゼンチンの迫力満点な攻撃陣を完封し、続く韓国戦でも日本屈指の強さをアピール。もともと南アフリカでも招集が期待されていただけに、ブラジルを狙う日本代表を後方から支えるのは栗原で決まりかと思われた。

 

しかし、不幸なことに肉離れを起こしてしまい、2年ぶりに優勝を狙うアジアカップのメンバーから栗原勇蔵は外れてしまう。そのアジアカップでは吉田麻也が定着、徐々に栗原は第3CBヘと格下げとなっていった。

その後、吉田麻也は代表に定着。メディア露出も増え、名実共に代表の中核へとのし上がっていった。

栗原勇蔵

 

 

しかし栗原にもチャンスが巡ってくる。アジア最終予選のでのヨルダン戦で吉田に変わって出場しすぐさまゴールを奪うと、最終予選最大の山場であるアウェイ・オーストラリア戦では先発出場。フィジカルに長けるオーストラリアを、持ち前の身体能力で跳ね返し続けた。

天敵・ケーヒルを潰し続け、日本の弱点であるロングボール攻撃にもしっかり対応。そして後半にはアウェイで値千金の先制ゴールを奪う。苦汁をなめ続けてきた栗原に、ようやく光が当たりはじめた瞬間であった。しかし・・・・


疑惑の判定での退場

 

しかし、後半終了間際に疑惑の判定から退場となってしまう。残り時間は僅かであったし、相手も既に10人であったことから、この試合に関してはそれほど大きな影響はなかったと言えるだろう。しかしこの退場は栗原にとってタイミングが悪かった・・・

 

120613_soc_japan

というのも、退場したため3ヶ月後の次節イラク戦では出場停止。そのためこの3ヶ月は栗原はザックの構想外となってしまった。その3ヶ月の間に吉田麻也はオリンピックで主将を務め、日本のベスト4に貢献して一気に株が上がっていった。栗原としては実に苦い3ヶ月であっただろう。

イラク戦直後には欧州遠征が待っており、フランス・ブラジルとの連戦が待っていたが、やはり代表のCBを務めるのは吉田麻也。怪我もあり徐々に栗原の出場試合は減っていった。

 

その後はグループリーグ敗退が決まり、既に7失点とチームとして崩壊中のコンフェデ・メキシコ戦で出場。ただでさえ嫌なムードの中、3バックと4バックが入れ替わる試合状況で満足なプレーが見せられないまま、試合は終了。

大会終了直後には若手主体の急増ニッポンに組み込まれ、東アジア選手権を戦った。栗原はチームとしてのバランスの悪さのツケを背負い、ゴールこそ挙げたが満足なプレーは出来ず。なんだか満足行くチャンスが第3CBの座は森重に奪われ、代表からお声がかからなくなってしまった。

 

守るならヨコハマ・ブランド

ザックジャパンの守備は崩壊中である。コンフェデで守備が崩壊し、続くウルグアイ戦では4失点。さらに先日のセルビア戦でも2ゴールを奪われた。ザックジャパンは攻撃のチームであり、「4点取られた後に5点取れない方が悪い」と本田圭佑が語る通り、攻撃で打ち勝つのが最初の目標だ。

しかし、このままではワールドカップを勝ち抜くのは難しい。ある程度押し込まれても守りきれる守備力がないと、1の勝ち点、1の得失点で明暗が分かれるグループリーグは戦い抜けないのだ。

となれば、理想は理想で置いておき、いざとなればラインを下げるという判断も重要となってくるのではないだろうか。

もちろんザックが積み重ねてきた理想はある。吉田と今野が最終ラインにいることで、相手をポゼッションで押し込むことが可能となるし、それは日本の生命線のひとつだ。

しかし、理想ではなく現実、今ではなく本大会を見据えた時に、この2人では補えない場面がどうしても現れてくる。

 

 

前述の通り、マリノスは伝統的に守備力の非常に高いクラブである。そして、中澤・栗原の両CBは、純粋にフィジカル勝負を行えば現状の今野・吉田よりも上である。

中澤は衰えが見えるものの、それを上回る大きな経験値がある。

栗原の身体能力は抜群。アフリカ・南米系のストライカーを相手にした時、ゴール前で戦い抜けるポテンシャルは栗原がトップではないだろうか。

そして彼らには脈々と続く日本トップレベルのディフェンスのノウハウがある。日本が出場したワールドカップの全ての試合で、マリノスのセンターバックが出場してきたというのは恐るべき事実であり、これを活かさない手はない。普段から高い守備力を求められ続けている環境に、若い時から身を置いてきたのも大きい。

 

吉田には吉田の、今野には今野の良さがある。しかし、ザッケローニ監督には是非。23人の選手枠のひとつを、「ヨコハマ・ブランド」のセンターバックで使うことをオススメしたい。

 

栗原勇蔵中澤佑二

 

 

記事/湯取俊二

 


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