大混戦の欧州W杯予選グループH、イングランド他、各国展望


 

日本代表が今回も世界最速で突破を決めた2014年のブラジルワールドカップ予選だが、まだまだ各地では熱い戦いが続いてる。

特に欧州予選は毎回その厳しさが伝えられるところだが、今回も例外ではない。6つの国ないし5つの国を9グループに分けて行われる欧州予選では、各組の1位のみがワールドカップ出場権を手に入れ、残りの4つの枠が各組2位の成績上位8チームによる、プレーオフで決定される。今大会もフランスとスペインが同じ組に入るなど、最も厳しい大陸予選といえる。

その欧州予選の中でも、熱戦を繰り広げているのが、イングランドが所属するグループHだ。イングランドのほか、ウクライナ、モンテネグロ、ポーランド、モルドバ、サンマリノが同組でワールドカップの出場権を争っているが、モルドバとサンマリノを除いた4チームがし烈なデッドヒートを演じている。

 

グループH 勝ち点 得失点差
イングランド

16

+22

ウクライナ

15

+15

モンテネグロ

15

+7

ポーランド

13

+9

モルドバ

-11

サンマリノ

-42

全チーム8試合消化した現時点の順位表がこちら。残り2試合を残して、4チームが勝ち点差3の中で戦うという大混戦となっている。なお、サンマリノの得失点差は今回は触れないでおく・・・。

この4チームのうち、1チームだけがワールドカップ出場権を手に入れ、2位のチームは現在の成績からプレーオフ進出はほぼ確定といえるだろう。だがこの4チームから2チーム、あるいはプレーオフの結果によっては1チームのみがワールドカップ本戦へと駒を進めることができるのだ。そして、10月11日(金)と15日(火)の連戦によってすべてが決まる。

おそらく史上まれに見ると言っても過言ではないこの状況で戦う4チームを紹介しよう。

 

イングランド

rooney eng

言わずと知れたフットボールの母国、イングランド。2010年ワールドカップでは「ゴール前に2階建てバスを置いた」と評された守備的な戦術で決勝トーナメント進出を果たすも、ドイツ戦でのランパードのゴールが取り消された誤審もあり敗退。2008年のユーロ予選敗退が記憶に新しい同国だが、予選敗退という失態を繰り返すことは絶対に許されない。

そんな同国の中心は、間違いなくこのウェイン・ルーニーだ。9月10日に行われたウクライナ戦では頭部の負傷により代表から離脱したが、今回の2連戦には招集されている。中盤ではアーセナルからウィルシャー、そしてランパード、ジェラードといったベテランが支える。

lambert

しかし同国をワールドカップに導くのは、こういった世界的に有名な選手ではなく、地方クラブの遅咲きストライカーかもしれない。日本代表・吉田麻也が所属するサウサンプトンFCでプレーするリッキー・ランバートだ。

今年の8月、スコットランドとの親善試合で31歳にして初招集を受けたランバートは、いきなりゴールを決めると、さらに直後のW杯予選・モルドバ戦でデビュー2戦連続ゴールを挙げ、予選で苦戦を強いられる同代表の救世主に一躍名乗り出たのだ。

若いころには工場に勤務しながら選手としての道を模索し続けたランバートが、ついに辿り着いたイングランド代表で見せた鮮烈な活躍は「シンデレラ・ストーリー」としてイングランド中のみならず世界中のファンに知れ渡ることとなった。この31歳の苦労人が、大事なホーム2連戦でイングランドを勝利に導くかもしれない。

・ イングランド代表 今後の日程

10/11 (金) vs モンテネグロ代表 (ホーム)

10/15 (火) vs ポーランド代表 (ホーム)

 

ウクライナ

tymo

2006年のドイツワールドカップ以来2度目となる本戦出場を目指すウクライナは国内組中心の選手で編成されている。その中で、豊富な海外での経験をもとに、国民から絶大な支持を誇るキャプテンが、アナトリー・ティモシュチュクだ。

18歳でウクライナの名門シャフタール・ドネツクに移籍したティモシュチュクは2006年にウクライナ代表の一員としてベスト8に貢献すると、2007年には当時のロシアリーグ史上最高金額である約24億円でゼニト・サンクトペテルブルグへ移籍した。そこでキャプテンを努めるとチームをUEFA杯優勝に導き、2009年にはバイエルン・ミュンヘンへと移籍した。

まさにキャプテンにふさわしい人物がまとめあげるウクライナ代表は、同国のレジェンド、アンドリュー・シェフチェンコを引退で失ったあとも安定したパフォーマンスを見せている。

現在2位につけているウクライナだが、最終戦の相手が今予選8試合で43失点を喫しているサンマリノであることは有利に働くはずだ。最終戦は勝利だけでなく、得失点差を考慮して、大量のゴールが求められるだろう。そして、ホームにポーランドを迎えるゲームは大一番となる。

・ウクライナ代表 今後の日程

10/11 (金) vs ポーランド代表 (ホーム)

10/15 (火) vs サンマリノ代表 (アウェイ)

 

モンテネグロ

Montenegro's Stevan Jovetic

旧ユーゴスラビアの系譜を引くモンテネグロは2006年にセルビア・モンテネグロから独立。セルビア代表がセルビア・モンテネグロの成績を引き継いでいるため、ユーロ合わせて初のメジャー大会本戦出場を目指す。同国を率いるのはイタリア・セリエAで実績を残している2人のストライカーだろう。

今季、フィオレンティーナからイングランドのマンチェスター・シティに移籍したステファン・ヨヴェティッチは、1.5列目からゴールを狙うセカンドストライカーだ。弱冠18歳でパルチザン・ベオグラードのトップチームへ昇格を果たすと、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、ユヴェントスといったビッグクラブから注目を集めた。

2008年からフィオレンティーナへ活躍の場を移すと副キャプテンを努め、ゴールを決めるだけでなくその柔らかなタッチでチームの攻撃を牽引した。フィオレンティーナのティフォージに「ロベルト・バッジョの再来」とまで言わしめた、類まれなるセンスでモンテネグロ代表の攻撃の中心となる。

vucnic

セリエA王者、ユヴェントスで活躍を続けるミルコ・ヴチニッチもモンテネグロに欠かせないストライカーだ。セリエAのレッチェで頭角を表すと、移籍したローマでセンタフォワードからウイングまでこなし、ユヴェントスの復権に大きく貢献した。

セルビア・モンテネグロが分裂する際、多くの選手はセルビア代表を選択したがヴチニッチは故郷であるモンテネグロ代表を選択。愛国心あふれるキャプテンがチームをまとめ、悲願の初出場を達成したい。

モンテネグロ代表も最終戦に、サンマリノに次いで下位に沈むモルドバとの試合が控えていることはアドバンテージになるだろう。出場権獲得に向けて、やはり大きな山場となるのは、アウェイでのイングランド戦だ。

・モンテネグロ代表 今後の日程

10/11 (金) vs イングランド代表 (アウェイ)

10/15 (火) vs モルドバ代表 (ホーム)

 

ポーランド

lewa

2012年にユーロの自国開催を果たしたポーランドは、2006年ドイツ大会以来、8回目の本戦出場を賭けて戦う。そしてこのチームの中心は日本代表・香川真司の元チームメイトであり、昨シーズン、欧州チャンピオンズリーグで準優勝を果たしたドイツのドルトムントで活躍する2人のプレイヤーだ。

わずか4億円でドルトムントに加入した2010年からわずか数年で、もはや世界最高のストライカーのひとりとなったロベルト・レヴァンドフスキは、ドルトムントのライバルであるバイエルン・ミュンヘンへの移籍を希望している。ドルトムントとの契約は2014年6月までとなっており、1月か来夏の移籍は確実だ。

ポーランド代表でもストライカーとして牽引する。2008年に代表デビューを果たしたレヴァンドフスキは、デビューゴールを挙げるなど代表に定着。自国開催となったユーロ2012大会では、開幕戦でオープニングゴールを挙げた。

kuba

「クバ」の愛称で親しまれるヤクブ・ブワシュチコフスキはポーランド代表のキャプテンだ。右サイドを駆け上がる強靭なスタミナと驚異的なスピードを武器にドルトムントでも活躍を続けている。

10歳の時に父親が母親を刺し殺し、両親を失うという悲劇に襲われたクバは、その後祖母に育てられた。だが立派な人格者となり母国をキャプテンとして引っ張っている。自国開催のユーロでは開幕戦で同点ゴールを決めると、膝をつき天国の母親に祈りを捧げた。

「母親は僕を見守ってくれている。どこかにいて僕を守ってくれている感じがするんだ」と話すキャプテンは母国のワールドカップ出場へと邁進する。

他の3チームと違い、イングランドと2ポイント差の勝ち点13ながら、最後の2連戦をホームで戦えないポーランドはいささか不利な状況かもしれない。しかしウクライナ、イングランドとの直接対決に勝利できれば自力での出場がぐっと近づくだろう。ひとつの不安要素としては、レヴァンドフスキとブワシュチコフスキと共にドルトムントでプレーする、サイドバックのウカシュ・ピシュチェクが怪我のため不在であることだ。

・ポーランド代表 今後の日程

10/11 (金) vs ウクライナ代表 (アウェイ)

10/15 (火) vs イングランド代表 (アウェイ)

 

この4チームのうち、来年のワールドカップでは1チームしか出場できない可能性も大いにある事実は、欧州予選の厳しさをよく表している。だからこそ予選から熱い戦いに期待が持てるのであって、日本のフットボールファンにとっても、特にこのグループHの動向を追って損はないだろう。

なお、10月11日に行われるイングランド代表vsモンテネグロ代表の試合を、イングランド・ウェンブリースタジアムから現地レポートします。

 

 


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